サンドイッチマン

   昭和初め頃東京の繁華街で体の前と後ろに看板を背負って宣伝の仕事をしている男がいた。

「ウナギ安いよ2円50銭だよ」「その店どこ」「あそこの角です」サンドイッチマンは愛想良く客の相手をしていた。口利き屋がやってきてサンドイッチマンに、今日はもういいと言い、サンドイッチマンに2銭渡した。陽に焼けたサンドイッチマンは金が少なすぎると言うと。口利き屋は、頭弱いくせに文句を言うなと言ってサンドイッチマンの足元に唾を吐いた。

帰り惣菜屋に行き売れ残りのおにぎりを3個買い家に戻った。買ってきたものを食卓に置き大好きな梅ぼし入りのおにぎりを見つめながら、(よく母さん仕事行く前に、おにぎり作ってくれた、明日はなんの仕事あるかな)とサンドイッチマンは一人ごちた。