最期のキス

ある病院で医師が「17時5分・・・御愁傷様です」と老母の最後を見守っていた家族に宣告した。 

 老母の娘の一人が「お母さん、お父さんのところに行っても仲良くしなきゃ駄目だよ」と涙を拭きながら言った。

 老母の長男が「葬式の段取りあるから俺もう行くわ」と病室から出た、一人また一人と老母に最後の別れを告げて病室を去って行った。先程亡くなった老母一人だけになった、しばらくしてある男が入ってきた、死んだ筈の老母の夫だった病室の外で「高木元警部補、手短にお願いします」と老母の夫告げた、夫は元公安警察官で家族にも身分を隠していた。現職中ある事件が元で偽りの死を演じ無ければいけなければならなくなった、高木元警部補は最後にまだ体温残る妻の唇に接吻をした。